外為法の報告制度について
説明:この場合は、居住者である本邦法人が非居住者である米国子会社への支払を、日本にある銀行等又は資金移動業者の為替を利用せずに、海外にある本邦法人の預金口座からの振替払い(外国における非居住者との間の支払)で処理しましたので、「銀行等又は資金移動業者を経由しない支払等」に該当します。
本例の場合には、本邦法人は、米国子会社に対する貸付資金の支払のほかに、もう一つ、別の非居住者である外国にある銀行から支払の受領(預金の引き出し)も行っています。
しかしながら、「非居住者である銀行から預金の引き出し(すなわち、非居住者からの支払の受領となる)」については、「銀行等又は資金移動業者を経由しない支払等の報告」が不要になっています。
2−1−3 個別の業務等に関する報告
- 外国法人に10%以上(議決権の割合)の出資を行っている者や外国法人等から10%以上(議決権の割合)の出資を受け入れている会社
- 海外に預金を持っている者
- 海外で証券を発行した会社
- 特定の業務を営む会社(航空会社、船会社、損害保険会社)
報告の種類 | 報告者 |
---|---|
外国法人の内部留保等に関する報告 | 外国法人に対し10億円以上の出資を行っており、その出資比率が10%以上(議決権の割合)となる居住者 |
本邦にある会社等の内部留保等に関する報告 | 外国投資家から10%以上(議決権の割合)の出資を受けている、資本金が10億円以上の日本の会社及び特定目的会社 |
証券の償還等の状況に関する報告 | 証券の発行・募集の報告を行っている居住者・非居住者で、毎年12月末における当該証券の発行残高が10億円相当額以上、かつ、前年の12月末以降に買入償却等の実施により発行残高が減少している場合 |
海外預金の残高に関する報告 | 非居住者に対し月末残高で1億円相当額を超える預金を保有している居住者 |
航空会社・船会社の事業収支に関する報告 | 本邦にある航空会社・船会社、本邦にある外国の航空会社・船会社の支店及び代理店 |
貨物の輸出入等に係る保険に関する報告 | 本邦にある損害保険会社 |
2−2 報告者
報告の種類 | 報告の内容 | 報告者 |
---|---|---|
取引に関する報告 | 資本取引 | 証券の発行・募集:居住者または非居住者 不動産等の取得:非居住者 証券の取得・譲渡:居住者 暗号資産の売買又は交換に係る媒介等:居住者 |
対外直接投資 | 居住者 | |
対内直接投資等 | 非居住者外国投資家(居住者による代理報告が必要)、居住者外国投資家 | |
技術導入契約の締結等 | 居住者 | |
支払等に関する報告 | 支払・支払の受領(支払等) | 居住者 |
個別の業務等の報告 | 外国法人の内部留保等 | 居住者 | 取引制度概要
本邦にある会社等の内部留保等 | 居住者 | |
証券の償還等の状況 | 居住者、非居住者 | |
海外預金の残高 | 居住者 | |
航空会社・船会社の事業収支 | 居住者 | |
貨物の輸出入等に係る保険 | 居住者 |
2−3 代理人による報告書の提出
(報告書の郵送先) 取引制度概要
〒103-8660 日本郵便株式会社日本橋郵便局私書箱30号
日本銀行国際局国際収支課 外為法手続グループ
または 国際収支統計グループ
司法取引まとめ
2018/11/08 危機管理, 刑事法
【メリット】
(1)裁判所費用の節約
司法取引を導入することで、『裁判費用の節約』または『捜査費用の節約』が期待されています。暴力団などの組織的犯罪や、企業ぐるみの経済犯罪などは、大量の捜査員を投入します。当然のことながら、時間や莫大な費用がかかります。
(2)重犯罪への対応が可能
司法取引が導入されることで、これまでの組織犯罪や経済犯罪における捜査員の縮小や人件費の削減が、事実上可能になります。
つまり、その分人員配置や人件費を凶悪な重犯罪(殺人、強盗、強姦など)の対応に当てることもできるのです。もっとも、今回の司法取引制度では、殺人や性犯罪は対象外としているため、当該メリットは乏しいかもしれません。
(3)事件の迅速な処理
今回の司法取引では、事件の有力な供述を得られる可能性があり、その分事件処理の効率が高まると予想されています。そうなれば、捜査費用や裁判費用の削減のみならず、時間を効率的に使えます。
(4)企業犯罪の軽減
企業犯罪においても、財政経済関係犯罪として適用されるため、その社員から刑事処分の軽減と引き換えに、有力な供述を聞くことができます。つまり、企業全体の組織的な刑事責任を追及しうるのです。
【デメリット】
(1)黙秘権の侵害
刑事事件の捜査において、取調べに対して沈黙し陳述を拒むことができる権利を、黙秘権(もくひけん)といいます。
黙秘権は、警察の取調べの際などに、被疑者の不利益になるような情報を強要してはならないという、憲法および刑事訴訟法で認められている権利です。しかし、司法取引制度によって検察側が被疑者に減刑という特典をちらつかせることで黙秘権の侵害に繋がる可能性があるという指摘があります。また、被疑者が減刑欲しさから虚偽の情報を申告する可能性もあるという指摘もあります。
(2)客観的証拠がおろそかになる
司法取引制度が多用された場合、検察官が取引の結果引き出された供述証拠に偏重してしまう可能性があります。
供述調書は供述者の主観に左右されるため、客観証拠に比べて事実認定の根拠とするには危うい側面があります。仮に司法取引制度を実施した結果、上記のような供述調書への偏重が生じれば、刑事裁判手続きの事実認定の確度が低下し、国民の刑事裁判に対する信頼が失われるおそれすらあります。
4、司法取引の流れ
(1)協議(司法取引)の開始
司法取引の主体は検察官と被疑者、そして弁護人です(法350条の4)。どちらか一方が当事者からの協議を申し入れ、相手方が承諾することで司法取引の開始となります。
(2)弁護人の同意
協議は、原則被疑者・被告人、検察官、弁護人の間で行われます。
なお被疑者が司法取引に関する合意を取り付けるためには、弁護人の同意が必要です(法350条の3第1項)。
(3)検察官との合意
司法取引では検察官との合意も必要になります。関係する被疑者・被告人、弁護人、検察官が全員署名のもとで合意内容書面が作成されます。その上で合意が成立するというわけです。
(4)合意からの離脱
一方が合意に違反した場合には、相手方は『合意からの離脱』が可能です(法350条の10第1項1号)。例えば、真実の供述を行う旨の合意が成立したにもかかわらず、被疑者等が供述や『他人』の公判での証言を拒んだ場合や、不起訴とする合意をしたのに、検察官が起訴をした場合などが考えられます。
検察官としては通常の刑事処分を行い、被疑者側としては『他人』の刑事事件の捜査・公判に協力する必要はなくなります。
5、法務担当者の対応
企業法務ナビよりお知らせ
本記事は、 3年以上前 に投稿された記事です。法律に関連する記事の特性上、法改正や特別法の施行、経過措置期間の経過、新たな条文解釈を示唆する判例の登場などにより、記事の内容と現在の法律運用・解釈との間に齟齬が生じている可能性もございます。何卒、ご注意ください。
国内株式のリスクと費用について
国内株式の委託手数料は「超割コース」「いちにち定額コース」の2コースから選択することができます。
〔超割コース(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
5万円まで 55円(税込)
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 115円(税込)
50万円まで 275円(税込)
100万円まで535円(税込)
150万円まで640円(税込)
3,000万円まで1,013円(税込)
3,000万円超 1,070円(税込)
〔超割コース(信用取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。
取引金額 取引手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)
超割コース大口優遇の判定条件を達成すると、以下の優遇手数料が適用されます。大口優遇は一度条件を達成すると、3ヶ月間適用になります。詳しくは当社ウェブページをご参照ください。
〔超割コース 大口優遇(現物取引)〕
1回のお取引金額で手数料が決まります。 取引制度概要
取引金額 取引手数料
10万円まで 0円
20万円まで110円(税込)
50万円まで 261円(税込)
100万円まで 468円(税込)
150万円まで559円(税込)
3,000万円まで 886円(税込)
3,000万円超936円(税込)
〔超割コース 大口優遇(信用取引)〕
約定金額にかかわらず取引手数料は0円です。
〔いちにち定額コース〕
1日の取引金額合計(現物取引と信用取引合計)で手数料が決まります。
1日の取引金額合計 取引手数料
100万円まで0円
200万円まで 2,200円(税込)
300万円まで 3,300円(税込)
以降、100万円増えるごとに1,100円(税込)追加。
※1日の取引金額合計は、前営業日の夜間取引と当日の日中取引を合算して計算いたします。
※一般信用取引における返済期日が当日の「いちにち信用取引」、および当社が別途指定する銘柄の手数料は0円です。これらのお取引は、いちにち定額コースの取引金額合計に含まれません。
- カスタマーサービスセンターのオペレーターの取次ぎによる電話注文は、上記いずれのコースかに関わらず、1回のお取引ごとにオペレーター取次ぎによる手数料(最大で4,950円(税込))を頂戴いたします。詳しくは取引説明書等をご確認ください。
- 信用取引には、上記の売買手数料の他にも各種費用がかかります。詳しくは取引説明書等をご確認ください。
- 信用取引をおこなうには、委託保証金の差し入れが必要です。最低委託保証金は30万円、委託保証金率は30%、委託保証金最低維持率(追証ライン)が20%です。委託保証金の保証金率が20%未満となった場合、不足額を所定の時限までに当社に差し入れていただき、委託保証金へ振替えていただくか、建玉を決済していただく必要があります。
レバレッジ型ETF等の一部の銘柄の場合や市場区分、市場の状況等により、30%を上回る委託保証金が必要な場合がありますので、ご注意ください。
【貸株サービス・信用貸株にかかるリスクおよび費用】
リスクについて 貸株サービスの利用に当社とお客様が締結する契約は「消費貸借契約」となります。株券等を貸付いただくにあたり、楽天証券よりお客様へ担保の提供はなされません(無担保取引)。
(信用貸株のみ) 株券等の貸出設定について 信用貸株において、お客様が代用有価証券として当社に差入れている株券等(但し、当社が信用貸株の対象としていない銘柄は除く)のうち、一部の銘柄に限定して貸出すことができますが、各銘柄につき一部の数量のみに限定することはできませんので、ご注意ください。
当社の信用リスク 当社がお客様に引渡すべき株券等の引渡しが、履行期日又は両者が合意した日に行われない場合があります。この場合、「株券等貸借取引に関する基本契約書」・「信用取引規定兼株券貸借取引取扱規定第2章」に基づき遅延損害金をお客様にお支払いいたしますが、履行期日又は両者が合意した日に返還を受けていた場合に株主として得られる権利(株主優待、議決権等)は、お客様は取得できません。 投資者保護基金の対象とはなりません 貸付いただいた株券等は、証券会社が自社の資産とお客様の資産を区別して管理する分別保管および投資者保護基金による保護の対象とはなりません。 手数料等諸費用について お客様は、株券等を貸付いただくにあたり、取引手数料等の費用をお支払いいただく必要はありません。 配当金等、株主の権利・義務について 貸借期間中、株券等は楽天証券名義又は第三者名義等になっており、この期間中において、お客様は株主としての権利義務をすべて喪失します。そのため一定期間株式を所有することで得られる株主提案権等について、貸借期間中はその株式を所有していないこととなりますので、ご注意ください。(但し、信用貸株では貸借期間中の全部又は一部においてお客様名義のままの場合もあり、この場合、お客様は株主としての権利義務の一部又は全部が保持されます。)株式分割等コーポレートアクションが発生した場合、自動的にお客様の口座に対象銘柄を返却することで、株主の権利を獲得します。権利獲得後の貸出設定は、お客様のお取引状況によってお手続きが異なりますのでご注意ください。貸借期間中に権利確定日が到来した場合の配当金については、発行会社より配当の支払いがあった後所定の期日に、所得税相当額を差し引いた配当金相当額が楽天証券からお客様へ支払われます。 株主優待、配当金の情報について 株主優待の情報は、東洋経済新報社から提供されるデータを基にしており、原則として毎月1回の更新となります。更新日から次回更新日までの内容変更、売買単位の変更、分割による株数の変動には対応しておりません。また、貸株サービス・信用貸株内における配当金の情報は、TMI(Tokyo Market Information;東京証券取引所)より提供されるデータを基にしており、原則として毎営業日の更新となります。株主優待・配当金は各企業の判断で廃止・変更になる場合がありますので、必ず当該企業のホームページ等で内容をご確認ください。 大量保有報告(短期大量譲渡に伴う変更報告書)の提出について 楽天証券、または楽天証券と共同保有者(金融商品取引法第27条の23第5項)の関係にある楽天証券グループ会社等が、貸株対象銘柄について変更報告書(同法第27条の25第2項)を提出する場合において、当社がお客様からお借りした同銘柄の株券等を同変更報告書提出義務発生日の直近60日間に、お客様に返還させていただいているときは、お客様の氏名、取引株数、契約の種類(株券消費貸借契約である旨)等、同銘柄についての楽天証券の譲渡の相手方、および対価に関する事項を同変更報告書に記載させていただく場合がございますので、予めご了承ください。 税制について 株券貸借取引で支払われる貸借料及び貸借期間中に権利確定日が到来した場合の配当金相当額は、お客様が個人の場合、一般に雑所得又は事業所得として、総合課税の対象となります。なお、配当金相当額は、配当所得そのものではないため、配当控除は受けられません。また、お客様が法人の場合、一般に法人税に係る所得の計算上、益金の額に算入されます。税制は、お客様によりお取り扱いが異なる場合がありますので、詳しくは、税務署又は税理士等の専門家にご確認ください。
炭素税、排出権取引などカーボンプライシングの動向と企業の対応ポイント
カーボンプライシングは、主に炭素税および排出権取引制度を指すことが多い。炭素税は、炭素含有量に基づき化石燃料の採取や使用等に伴い課される税で、環境コストを経済的に内部化するための手法である。一般にカーボンプライシングは企業にとって追加コストとみられるが、見方を変えると脱炭素投資のリターンと捉えることもできる。日本では2012年に地球温暖化対策のための課税の特例* 1 が導入され、原油等の輸入者などに課される石油石炭税* 2 に上乗せする形で課されている。
各国のカーボンプライシングの導入状況と国境炭素調整の議論
世界に目を向けると、世界銀行のデータベースでは、2021年4月10日時点で46の国、35の地域でカーボンプライシングが導入されており、2020年時点で12GtCO2の排出量をカバーし、これは全世界のCO2排出量の22.3%を占めている* 3 取引制度概要 。また、2019年から2021年の間にカナダ、シンガポール、南アフリカ、オランダ、ルクセンブルクで新たな炭素税や排出量取引制度の導入がされている(図表1)。米国の連邦政府では、排出量取引および炭素税の導入がされていないものの、カリフォルニア州の排出量取引制度や地域温室効果ガスイニシアチブ(Regional Greenhouse Gas Initiative、RGGI)における排出量取引制度(北東部のコネティカット州、デラウェア州、メイン州などが対象)が実施されている。中国においては、省レベルの排出量取引制度(北京、上海、深圳などが対象)が2013年以降導入されているとともに、2021年2月に全国レベルの排出量取引制度が、電力事業者を対象として運用が開始された。
また、こうした従来から存在するカーボンプライシングの他、欧州では2019年12月に公表された欧州グリーンディールにおいて国境炭素調整メカニズム(Carbon Boarder Adjustment Mechanism、 「CBAM」という)の導入を進めることが打ち出されている。国境炭素調整とは、海外からの輸入品に対し、その生産に際して排出された温室効果ガスの量に応じて金銭的負担を求める制度である。EUでは2020年にはパブリックコンサルテーションを実施し、2021年6月までにCBAMの制度概要を公表し、2023年1月の施行を目指している。欧州におけるCBAMの導入は、EU-ETSのもので現在無償割当の対象である産業で、今後、排出量削減に取り組むにあたり、中国をはじめとする欧州域外との費用負担の平準化をはかる措置である。こうした国境炭素調整導入の前提として、自らの国または地域で相当程度の炭素税や排出権取引制度による負担が生じていることが挙げられる。
一般に、高い炭素価格が設定されればされるほど、脱炭素のための投資意思決定のハードルが下がり排出量削減へのインセンティブが働くといわれるが、各国でカーボンプライシングの導入の動きが進むとともに、炭素価格の高騰が進んでいる。EU-ETSにおける排出権の価格は、2020年4月6日から2021年3月26日までの期間で、最低価格18.58ユーロから最高価格42.72ユーロまで高騰している* 4 。また、適切な炭素価格の設定や今後の予測に関しては各機関からさまざまな発表がされている。High Level Commission on Carbon Pricesでは、パリ協定で定められた目標を2050年に実現するためには、炭素価格は2020年に40~80ユーロ/tCO2、2030年には50~100ユーロ/tCO2となる必要があるとされている。国際エネルギー機関(以下、「IEA」という)では、経済発展の持続可能性を考慮すると2025年で43~63ドル/tCO2、2040年で125~140ドル/tCO2が適切な水準と示されている* 5 。
取引制度概要
パリ協定の加盟国であるカナダでは、2018年より連邦法Greenhouse Gas Pollution Pricing Act (以下、連邦法GGPPA)が施行されており、国家レベルでの気候変動に対する具体的政策が示されている。
この連邦法GGPPAの趣旨は二つある。まず、化石燃料の利用について連邦炭素税を導入することであり、化石燃料の価格を高めることで一般的な消費者の需要を削減することである。次に、Output-Based Pricing Systemと呼ばれる排出枠取引制度の一種を政府の定める対象産業に導入することにより、一定の排出枠を超える企業・施設に対して温暖化ガスの排出削減を促すものである。このOutput-Based Pricing Systemでは、法令に定められた排出枠を下回るとクレジットが付与され、逆にこれを上回ると連邦歳入庁(Receiver General for Canada)により税金が徴収される仕組みとなっている。
このように連邦法GGPPAは一般の国民に対しては連邦炭素税を課税し、産業界に対してはOutput-Based Pricing Systemを用い、制度としては国家レベルでの化石燃料の需要を減らすための行動変化を促す仕組みとなっている。
[1] “Carbon pricing in Canada: A guide to who’s affected, who pays and what and who opposes it”, The Globe and Mail(14 November 2018, updated 25 February 2020),
[2] Amanda Connolly 取引制度概要 and Emerald Bensadoun, “Canada’s carbon tax increasing April 1 despite coronavirus economic crunch”, Global News(1 April 2020),
図1:カナダの気候変動に関する取り組み
(2) 各州の州法
[3] Sharon Mascher, “Striving for equivalency across the Alberta, British Columbia, Ontario and Quebec carbon pricing systems: the Pan-Canadian carbon pricing benchmark”(2018)18:8 Climate 取引制度概要 Policy 1012 at 1015.
図2:カナダの多様な温暖化ガス排出規制 取引制度概要 図3:カナダ各州の温暖化ガス排出量
a)炭素税制度(ブリティッシュ・コロンビア州)
b)キャップ・アンド・トレード制度(オンタリオ州、ケベック州)
c)ハイブリッド制度(アルバータ州)
アルバータ州のハイブリッド制度の内、対象産業への排出枠制度は時の政権により変化してきたものの、基本的に現在も原型を留めて残っている。2007年にアルバータ州政府はSpecified Gas Emitter Regulation(SGER)を導入し、温暖化ガス排出量が多い企業・施設のみを対象とし排出枠を設けた。SGERでは企業・施設ごとの温暖化ガスの排出量をベースラインとして定め、次第にベースラインを厳しくする措置が取られた。もし企業・施設が定められた排出枠を超過する場合は、(1)超過した1トン当たりの温暖化ガスに比例する税の納付、(2)排出枠クレジットの購入、あるいは(3)カーボン・オフセットを他の産業から購入することが必要とされた。なお、(1)の1トン当たりの課税については、導入当初の2007年は15カナダドルであったが、後に2016年に20カナダドル、2017年には30カナダドルまで引き上げられた。SGERではカーボン・オフセットの一つとして二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術も注目を浴びた。その結果、2010年の法改正でアルバータ州ではCCSに関する法制度も整備され、アルバータ州はカナダで初めて包括的なCCSに関する州法を持つことになった。
その後、SGERは2018年のノトリー前政権(在任期間:2015年から2019年)の下でCarbon Competitive Incentive Regulation(CCIR)という制度に置換されたものの、基本的な構造には大きな変化はなかった。CCIRは年間10万トン以上の温暖化ガスを排出する企業・施設を対象とし、温暖化ガスの排出削減を促した。SGERでは排出枠を超えるほど企業・施設の金銭的負担が比例して増えたが、CCIRでは排出枠を超過しても実際の温暖化ガス排出量に連動しない費用の支払いが定められた。
2019年に政権交代でケニー政権(在任期間:2019年から現在)が誕生しても、対象産業への排出枠制度は踏襲された。ノトリー前政権時代のCCIRは2020年1月からTechnology Innovation and Emissions Reduction Regulation(TIER)と呼ばれる新たな規制になったが、実際のところTIERはCCIRと大差なく、引き続き年間10万トン以上の温暖化ガス排出量がある企業・施設が対象となる。ただ、特記すべき変更点は、CCIRでは対象業界のベスト・プラクティスが対象産業全体におけるベンチマークであったのに対し、TIERでは対象産業に含まれる個々の企業・施設自身の過去のパフォーマンスをベンチマークとすることができることである。これにより、対象業界の企業・施設はどちらを温暖化ガス排出量のベンチマークにするかという選択肢が与えられる。アルバータ州における化石燃料系の業界の重要性を掲げるケニー政権にとっては、化石燃料の開発・利用を推進しつつ、同時に国内外にこれらの業界の低環境負荷化が可能であることを示す事例となった。
[4] Government of British Columbia – Office of 取引制度概要 the Premier, “COVID-19 Action Plan: B.C.’s first steps to support people, businesses”, News Release(23 March 2020, updated 26 March 2020), online: .
図4:温暖化ガス排出規制の変遷
第二部 炭素税をめぐる連邦政府と一部の州政府の軋轢
(1) カナダを二分する連邦炭素税をめぐる訴訟
図5:連邦炭素税をめぐる連邦・州政府の相関図
(2) オンタリオ州、サスカチュワン州、アルバータ州による訴訟
これらの三つの裁判で最大の論点となったのが、連邦政府と州政府の所管事項をめぐる争いである。カナダの連邦・州政府の所管事項はカナダの1867年憲法の第91条と第92条で定められている。この中で、連邦政府の所管事項の一つとして「平和、秩序、良い統治 (Peace, Order and Good Governance)」という法概念がある。法曹界で略して「POGG」と呼ばれるこの所管事項においては、「非常事態」あるいは「国家的懸念」と認められる場合には連邦政府の所管事項となるとカナダ最高裁判所のこれまでの判例で定められている。
三つの裁判では、連邦政府は三州に対して気候変動が「国家的懸念」であるという議論を展開した。カナダの法律では「国家的懸念」に基づく「平和、秩序、良い統治」を根拠とする連邦政府の管轄を発動するためには、その対象となる事項が「単独の、明確な、不可分な事態 (single, distinct, and indivisible)」であることが求められ、加えて個々の州政府のみでは対応しきれない事態であることが求められる。連邦政府は三州に対し、気候変動は州の境界を超えた「国家的懸念」であり、「単独の、明確な、不可分な事態」の範疇にあり、さらに個々の州の取り組みでは効果ある気候変動対策が行えないとの議論を展開した。
第三部 今後の展望
[5] Martin Olszynski, Nigel Bankes, and Andrew Leach, “Alberta Court of Appeal Opines That Federal Carbon Pricing Legislation Unconstitutional”(17 March 2020), online(blog)at 10: ABlawg
[6] Jason MacLean, “Climate Change, Constitutions, and Courts: The Reference re Greenhouse Gas Pollution Pricing Act and Beyond”(2019)82 Saskatchewan Law Review 147 at para 66.
[7] Canadian Association of Petroleum Producers, “CAPP Comments on Federal Carbon Pricing Backstop”(Submitted to 取引制度概要 Environment and Climate Change Canada, 30 June 2017)at 5.
[8] Dwight Newman, “Federalism, Subsidiarity, and Carbon Taxes”(2019)82 Saskatchewan Law Review 187 at para 20.
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